18/10/2021
【世界を旅した料理人の物語 第二章 さらなる高みを目指して<後編>】
イタリアで、料理人として着実に自身の地位を築きつつあった間中料理長。イタリア生活もすっかり慣れた頃、ある転機が訪れます。
それは日本に一時帰国し、メインの鳩料理が評判となっていたあるレストランに足を運んだときのことです。
●さらなる高みへ 訪れた転機
「料理を口にした瞬間、衝撃を受けましたね。雷に打たれたとはまさにこのことをいうのでしょう。当時、私自身も鳩を扱い、1週間に50~70羽ぐらい捌いていて、火入れにも自信がありましたが、その店の鳩料理はまったくの別物でした」
そのレストランの名は「Quintessence(カンテサンス)」。パリで修業を積み、帰国後は東京に自身の店をオープンさせ、32歳という世界最年少の若さで三ツ星をとった岸田周三氏がオーナーシェフを務めるフレンチレストランです。
「カンテサンスを訪れて強く感じたのは、このまま保守的なイタリアにいてはだめだということ。イタリアンという自身の基盤をさらに高みへと引き上げるためには、この国を出なければ…そう思ったのです。でもどこへ行けばいい…?やはりフランスなのか?いろいろと考えて私が決めた行先は、スペインでした」
●新たな活躍の場を求めて
世界一予約が取れないと称された「エル・ブジ(El Bulli)」をはじめ、スペインには世界のベストレストランに選出されるような名店が数多くあると間中料理長は言います。そんなスペインを自身の新たな活躍の場と定めて再びイタリアへと戻った間中は、まず履歴書を片手に、スペインで食べ歩きを始めます。
「イタリアからスペインへは電車で移動することができるので、時間を見つけてはスペインまで食べ歩きに出かけました。ここだと思った店に巡り合ったときは、履歴書を見せて働かせてもらえるかを交渉しました」
実際にレストランへ足を運び、料理を食べて気に入れば、その場で履歴書を見せ、料理人として雇ってもらえるかを打診する。それが間中のやり方。一見無謀にも思えるこの方法で、門前払いされることはなかったのでしょうか?
「もちろんありますよ(笑)。でも履歴書を持ち歩き、いざというときに出すというのは、ものすごく効果的なやり方だと思っています。履歴書というのは、メールで送ったところでまず見てもらえませんから。やっぱり相手も人間なので、直接会って話をした方が、人となりが分かるし愛情も沸く上、印象に残りやすいんです。だからお願いしたときはダメでも、ポジションに空きが出たときなんかに、連絡をくれることもあったりします」
人から紹介してもらうという方法もある中、あえてそうはせず、自分自身で働く場を探すことにこだわった間中。それはなぜなのでしょうか?その理由を聞くと一言答えが返ってきました。
「その方がしがらみがないし、自分のやりたいように進んでいける。そして上手くいかないことがあっても人のせいにすることがない。自分の決めたことだと思えますからね」
そんな確固たる信念と行動力で次なるステージへと進んだのは、イタリアにわたってから4年後、2011年のことでした。
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